「お父様っ!これはどういう事ですか!?」
エルハムはセリムが乗っていた馬に乗せられ、急いでシトロンの国へと戻った。
セリムや使用人達に止められてけれど、エルハムは無視をして、濡れた体のままで父であるアオレン王の自室まで向かった。
エルハムが乗り込んでくるとわかっていたのだろう。ノックのせずに突然入ったエルハムを見ても驚いた様子はなかった。
ソファに座っていたアオレンはエルハムを見て安堵の表情を見せた。
「エルハム。無事に戻ったようだな。………安心した。」
「お父様。何故、ミツキが捕まらなくてはないらいのですか?」
「エルハム、落ち着きなさい。」
「落ち着いてられません!」
エルハムは声を荒げてアオレンに詰め寄った。アオレンは娘の剣幕に押され言葉を詰まらせた。
けれど、1度咳払いをした後に、アオレンはいつものように堂々した態度で話しを始めた。
「今日の朝早くにおまえとミツキが変装をして城から出てったのをセリムが見つけ、私に報告をしに来たのだ。2人は他の騎士団に見守らせて、ミツキの部屋を調べることにしたんだ。」
「な、なんでそんな事!」
「………エルハム様をコメットがいるチャロアイトに連れていこうとする人間は密偵以外に考えられなかったのですよ。」
アオレン王の代わりに説明したのは後ろに控えていたセリムだった。
セリムは怒った表情で淡々と話しをしていた。いつものセリムとは雰囲気が違い、エルハムは少し怖さを感じてしまった。