第36話「疑い」
「ねぇ……ミツキ?どこなの……。」
エルハムは伝記の入ったバックを強く抱き締めたまま、うろうろと薄暗い森の中を歩き回った。
足元はぬかるんでおり歩きにくい。
エルハムは何度も転びそうになりながらも、彼の姿を探した。
馬車の車輪や馬の足跡が多く残った場所があった。そこが、ミツキが馬車を止めて待っていた所だとすぐにわかった。
けれど、馬車はそこから移動した形跡があった。
そして、その周りには沢山の人の足跡があったのだ。
それを見つけて、エルハムはハッとした。これがチャロアイトで感じた鋭い視線の人だったら。そして、それがコメットだったら。
考え付いた瞬間、エルハムは今来たばかりの道を戻ろうと急いだ。
「………ミツキ………。」
エルハムは彼の名前を呼びながらトンネルに向かい、チャロアイトに戻ろうとしたのだ。
もしコメットに襲撃されて捕まってしまったのだとしたら、彼らの拠点であるチャロアイトに居るはずだと思ったのだ。