第33話「恋という文字」
「おはようございます。」
「…………おはよう、ミツキ。」
起こしに来てくれたミツキに対して、エルハムはぎこちない笑顔と共に言葉を返した。
すると、同じような表情でミツキはエルハムを見ていたが、エルハムは彼を見ることは出来ずすぐに視線を逸らしてしまう。
伝記を読んでから数日。
エルハムとミツキは、ぎくしゃくした雰囲気に包まれる日が続いていた。
原因は、エルハムにあるのだが、エルハムの態度の変化に気づいたミツキも、少し表情が固くなっていた。彼が普段通りに接してくれるのはとてもありがたかったけれど、エルハム自信が彼と普通に話す事が出来なかった。
エルハムの周りの人も心配をしてくれていた。
エルハムが元気がない事を、父やセリム、セイなどが気にかけてくれていた。
けれど、話す事など出来ずに「大丈夫よ。」と言うだけだった。他の人が気がつくほど、気持ちが出でしまっている事を反省するけれど、それを直す事は出来なかった。