「ニホンに戻るのは確かに怖いよ。ここに来たのは、俺を助けてくれたのだとも思う。………日本では、何もかも終わってしまっていて、そして俺は置いてかれているのかもしれない。昔のあの世界はないのかもしれない。」
 「ミツキ………。」
 「でも、確かめたい事もあるんだ。それに、守りたかった人も……まだ、居るかもしれない。」
 「………ミツキは戻りたいんだね。」
 「………そうなのかもしれないな………。」


 頬に優しく触れていた指が離れた。そして、ミツキの視線も自然と逸れていく。
 それを感じて、エルハムは先程のは違った涙の粒が頬のなぞった。

 けれど、それを拭ってくれる人はいなかった。






 ミツキが部屋を出て行き、エルハムはベットに横になってみたが、全く寝れなかった。
 原因はもちろん、ミツキの話を聞いたせいだった。

 元の世界で襲われた事。それも十分に衝撃だった。彼にそんな過去があったとは思いもしなかったのだ。
 そんな彼を専属護衛にしてしまったのは、彼にとって酷な事だったのかもしれないとまで思った。けれど、守りたいから、強くなりたいと言った彼の言葉をエルハムはしっかりと覚えていた。それに、今まで騎士団にも入り警備や訓練をしてくれていたのだから、きっと大丈夫なはずだとエルハムは思いたかった。