「………エルハム………エルハム。」
 「…………ん…………、ミツキ?」
 「悪いな、寝てる所起こしてしまって。」
 「ううん…………っっ!!私、寝てしまったのね……。」


 エルハムは、ミツキに優しく起こされ飛び起きる。起きて待っているはずが、うとうとしたままテーブルに顔を伏せたまま寝てしまったようだ。エルハムは、真っ赤になっているだろう顔を両手で包みながら、ミツキに謝罪した。


 「ごめんなさい。寝てしまうなんて………。」
 「いいさ。俺が読むのが遅いからな。待たせたな。」


 ミツキは、気落ちしているエルハムの頭をポンポンと撫でてくれる。
 ミツキは寝てしまったことを気にしていると思っているようだった。もちろん、それもある。けれど、エルハムが1番恥ずかしかったのは、彼に寝顔を見られてしまった事だった。
 好きな人にうたた寝をしている顔を見られるなんて、エルハムは今すぐ少し前の自分を叩き起こしたい気持ちでいっぱいだった。


 「読み終わったよ。」
 「………うん。どうだった。」
 「あぁ、とても興味深いものが沢山あった。」

 ミツキの瞳が、輝いているのがわかった。彼がとてもイキイキとしているのだ。
 自分が彼の役に立った。それは嬉しいはずなのに、何故かエルハムの胸はズキッと痛んだ。
 それを彼に隠すようにエルハムは彼に問いかけた。

 「私がミツキから教えてもらったニホンとは違うように思ったんだけど。本当にミツキが居たニホンの同じなの?」
 「あぁ………。確かに違う世界みたいに思えるよな。」


 ミツキは微笑み、そして楽しそうに笑っていた。
 エルハムの大好きな笑顔。
 そのはずなのに、今は見ているのが辛い。


 「ここに書かれているのは、俺と同じ世界の日本。そして、俺が居たよりも昔の……過去の時代だ。」