1巻という事でカゲカワがニホンで暮らした様子が詳しく書かれていたのだ。
 けれど、その暮らしはエルハムがミツキから話を聞いたものとは少し違っていた。クルマやヒコウキなど、人を乗せて動く機械も出てこなかったし、デンワという物もなかった。そして、暮らしぶりも違うように感じたのだ。
 ニホンという名前が同じだけで、違う国なのだろうかともエルハムは思ってしまい、この本がミツキの役に立ちのか不安になってしまった。

 薄い本だった事と、続きが気になり一気に読んでしまった事もあり、あっという間に読み終えてしまった。
 エルハムは、早くミツキにこの本を読んでもらいたくて、ミツキの部屋へ行こうか悩んだ。
 今日はセイの家の護衛があり、その後もエルハムの仕事に付き合ってくれていた。疲れているだろうと思いながらも、エルハムはベットから降りて、いつものテーブルに近づき、しゃがんだ。
 そして、コンコンッと小さくノックした。エルハムがミツキを呼びたいときにする合図だ。しかし、今日はいつもより小さめに鳴らした。これに気づかないぐらい寝ているのならば、彼を寝かせてあげたいと思ったのだ。もし起きていて気づいてくれたのならば、本を読んで欲しい。そうエルハムは思って彼の反応を待った。


 しばらくすると、エルハムの部屋の扉を小さくノックする音が聞こえた。
 ミツキが来たのだとわかり、エルハムは嬉しくなる気持ちを抑えられずに、駆け足でドアを開けた。


 「どうかしたか?」
 「ミツキ、夜中にごめんなさい。………寝てたかしら?」
 「いや、起きてた。また、寝れないのか?夢でも見た?」
 「ううん。大丈夫。」


 ミツキはエルハムの返事と様子を見て、ホッとした表情を見せた。
 きっと何かあったのだと慌てて来てくれたのだろう。ミツキのそんな気遣いに、エルハムは頬が赤くなってしまいそうだった


 エルハムは、ミツキを部屋に招き入れた。
 そして、ベットに置いてある本を持ち、彼に手渡した。


 「これ、早く読んで欲しくて……。」
 「もう読み終わったのか?」
 「うん。そんなに長くなかったから。」
 「そうか。………ありがとう。」