突然自分に向けて声を掛けられ、エルハムは驚き体をビクッとさせた。恐る恐る声の主の方へと体を向ける。すると、そこには騎士団の正装のミツキが腕を組んで、トンネルの壁に寄りかかって立っていた。
 エルハムは驚き、悲鳴を上げそうになったのを何とか我慢した。


 「な、何でミツキがここに………。」
 「おまえが置き手紙残したんだろ。」
 「そ、そうだけどどうして、ここに居るってわかったの。」
 「俺にも内緒で行こうとしている場所なんて、ここしかないだろ。……それに、おまえ何でそんな好をしてんだよ。」

 
 ミツキはエルハムを見つめてため息をついた。その時、誰かがトンネルから出てくる気配があった。ここでミツキが誰かに見られてこの格好の自分を見られてまずいとエルハムは思った。
 

 「とりあえず、ミツキ。こっちに来てっ!」
 「お、おいっ…………!」


 エルハムはミツキの腕を通って山道ではない森の奥へと隠れるように入った。
 ミツキは疑問に思いながらも、エルハムに何か考えがあるとわかったのか何も言わずに着いてきてくれた。今は誰にも見つかりたくなかったため、エルハムは彼が理解してくれた事に感謝した。


 そして、しばらく歩き木々が多くある場所でエルハムは立ち止まった。


 「ここまで来ればいいかしら。」
 「………で、ここまで隠れた理由と、その服装の訳を話してくれるだろ?」
 「うん。実はね………。」


 エルハムは、小さな声でセイとの話を彼に伝えた。変装してチャロアイトの国へ入ったこと。そして、ニホンの事が書いてあるであろう本を見つけて持ってきた事をミツキに伝えた。