第29話「魔法の図書館」





 しばらくの間泣き続けたセイを、エルハムは抱き締めながら、これから彼女に何が出来るだろうか、と考えていた。

 彼女を守り支えることは出来る。けれど、それでセイが幸せになれるかは別だ。
 先ほど、セイはまた店を始めたいと言う夢を教えてくれた。そうなると、この城を出て暮らしていかなければいけない。
 そのためには、コメットとの事を解決するしかないのだ。
 エルハムは、そう思いコメットとの解決方法を考えていかなければならないと、改めて思った。

 
 「エルハム様………その、ありがとうございます。泣いている姿を見せてしまうなんて、お恥ずかしいです。」
 「そんな事はないわ。……それに、セイの言葉を聞いて、私も今やろうとしている事をまずはやってみたいって思えたの。考え直すきっかけになったわ。ありがとう………。」
 「やりたい事、ですか?」
 「えぇ………チャロアイトに行こうと思ってるの、ミツキのために。コメットの奇襲事件でセイが傷ついているのに………ダメな姫だと思っているわ。」
 「それはどういう事なのですか?」


 セイは疑問を浮かべた顔でエルハムを見つめた。それもそのはずだ。何も知らないセイは、何故エルハムがチャロアイトに行かなければ行けないのか、わかるはずもなかった。

 エルハムはセイに話してしまうのを迷いながらも、全て伝える事に決めた。
 彼女も自分の気持ちをさらけ出してくれたのだ。エルハム自身の想いも伝えなければいけないと思ったのだ。