エルハムは、自分の格好を見つめながら、ホッとしたのだった。
 エルハムはいつものように綺麗なドレスを着ている訳ではなかった。この日は青果店の娘であるセイの服を着ていたのだ。セイに変装すれば、商人としてすぐに通れると思ったが、それは正解だった。
 セイの私証を見ながら、エルハムは「セイ、ありがとう。」と、小さな声で呟いた。







 それは、奇襲事件が起こって数日後の事だった。エルハムは、いつものようにセイの部屋前に来ていた。

 今日は奇襲事件について彼女に話しをしておこうと思ったのだ。
 彼女も城に住む一人だ。しっかりと騎士団に警備をしてもらうから安心して欲しいとも伝えたかった。


 コンコンッ


 いつものように、扉をノックした。
 すると、その日はいつもと違った。
 いつもならば、反応はなく沈黙だった。けれど、この日はゆっくりとドアノブが動いたのだ。


 「…………。」
 「………セイ!会いたかったわっ!」


 ドアを開けて出てきたのは、少し痩せてしまい、笑顔がないセイだった。
 けれど、エルハムは自分でドアを開けて、顔を見せてくれた事が嬉しくて仕方がなかった。


 「…………城で、エルハム様が狙われたと騎士団の方が話してるのを聞きました。…………エルハム様………すみません。」
 「何故、セイが謝らなきゃいけないの?謝る必要なんてないわ。」
 「ですが。私がここにいるからエルハム様が狙われたのでは………。」
 「私がこの城に居るから、よ。ねぇ、セイ。少しお話ししたいわ。」
 「はい………。」