光りでぼんやりと明るくなったトンネル。
 そこは、昔にミツキと初めて出会った場所だ。あの頃は、彼が専属護衛になるとは思ってもいなかったし、それに好きな人になるとは考えてもいなかった。
 そんな事を思うと、この場所はとても大切な場所だとエルハムは思えた。
 

 ミツキが帰ってしまうのなら、図書館なんて行かなくてもいい。本など見つからない方がいい。
 弱い自分がそんな風に思ってしまい、店主から話しを聞いた後もすぐには行動出来なかった。けれど、ミツキはきっとすぐにでも本を読んで情報を掴みたかっただろう。それでも、動けなかった。

 そんなエルハムを気持ちを変えたのはある出来事がきっかけだった。







 「次。私証を見せろ。」
 「…………っっ!!はい。」


 考え事をしながらトンネルを歩いていると、いつの間にかチャロアイト国の検問の前に来ていた。そして、兵士がエルハムを見て怒鳴り声で呼んだ。呆然として動こうとしなかったのだ、当たり前だろう。エルハムは焦りながら肩から下げていたバックから私証を取り出した。


 「青果店か………何も持ってないようだが?」
 「今日は取引の交渉をしに来ました。」
 「あぁ、そういう事か。よし、入れ。」
 「ありがとうございます。」

 
 エルハムは、小さくお辞儀をするとすぐに検問から離れた。エルハムは緊張した気持ちを抑えながら平然と歩いていた。けれど、内心ではドキドキしていたのだ。


 「………青果店の娘になれてたかしら?」