「ごめんなさい。ミツキもずっと気になってたみたいなの。だから朗報が嬉しいの。………それで、その本はどこにあるのかしら?」
「はい。私の本ではなかったので、確か図書館にあったと思うのです。」
「それはシトロンの図書館かしら?」
「いえ………かなり前だったと思うので……おそらくチャロアイト国の図書館にあったものだと思います。」
「そう。チャロアイト国に………。それで、内容は覚えているの?」
「異国であるニホンから来た人の伝記だったと思うのですが………ニホンという名前だけは覚えておりますが、内容はうろ覚えでして。申し訳ないです。」
店主はそういうと申し訳なさそうに頭を下げていた。
けれど、エルハムは驚きと感謝で胸がいっぱいになっていた。
「そんなことはありません。よく思い出してくれました。初めての手掛かりなので、とっても嬉しいです。そうよね、ミツキ?」
「あ、あぁ………。今まで手掛かりなんて見つかったことがなかったから驚いてしまって……。本当にありがとうございます。」
ミツキは少し顔が強張っていたけれど、それぐらいに驚いている証拠だった。
エルハムは店主にお礼をしてから、奇襲事件の事もあるのでミツキに店主を家まで送ってあげるようにお願いをした。
「今度、チャロアイトに行かなきゃ………。」
そうエルハムは思いながらも、今の状況では行けないのはわかっていた。しかも、チャロアイトはコメットが居る国でもあるのだ。
いくらミツキが欲しい情報があるとしても、父が許してくれるはずがなかった。
それに、ミツキは私証がないのだ。
エルハムの護衛としてならば、なんとか入れるだろうが、一人ではチャロアイトに入る事も出来ない。
どうしようか。
そう悩みながらも、エルハムは少しホッとしていまっていた。
もし、その本にニホンに帰る方法が載っていたとしたら、ミツキは居なくなってしまうのだろう。
そう思うと、エルハムは、その本を読むのが怖くて仕方がなかった。