第26話「真実への道」




 セリムがどうしてこんな事をしているのか、エルハムにはわからなかった。
 けれど、エルハムの腰に手を当てる彼の力は強く、そこからは「守りたい。」という気持ちが伝わってくるようだった。

 エルハムが動揺していたが、部屋に入ってきたミツキは一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐにいつもの冷静な表情に戻っていた。
 そして、冷たい視線をセリムにおくっていた。


 「セリム団長………何をしているのですか?」
 「見ていてわからないか?少しは遠慮をして欲しいものだが……。」
 「セリムっ!冗談は止めてちょうだい。」
 

 エルハムは恥ずかしさと戸惑いで、セリムの体が痛まない程度に、ゆっくりと体を押した。けれど、セリムの力は緩むことがなく、また彼の胸に押し付けられてしまう。


 「………セリム、もう終わりにして………。」
 「セリム団長、エルハムが嫌がっているように見えます。専属護衛として、それは見過ごせません。」
 「専属護衛として、ね………。」


 セリムはそう呟くと、やっとエルハムを抱き締めていた腕を緩めた。
 そして、いつものように優しくエルハムを見つめて微笑んだ。


 「約束成立ですね。私はエルハム様との約束を守ります。」
 「え、えぇ………それはよかったわ。」