第25話「約束の証」




 「セリム……。」


 エルハムは必死に手を組んだ祈っていた。目の前に居る、苦しげに目を瞑って眠るセリムを見つめながら。


 エルハムがコメットに襲われた時にセリムがエルハムを守ってくれた夜。脇腹に刺さった弓矢が思ったより深く刺さってしまい、セリムはそのまま気を失ってしまった。
 騒ぎにようやく気づいた騎士団員がぞくぞくとエルハム達の元に集まり、団長の傷を見て皆が絶句した。いつもは毅然と団員をまとめているセリム。その彼が体には矢が刺さり、そこからは血が溢れ、そして本人はぐったりとしているのだ。動揺するのも無理はなかった。
 けれど、1人だけ違った。


 「ボーッとしている暇はない。団長を部屋に運ぶんだ。そして、誰か医者を呼んでこい!急いでだっ!」
 「っあぁ、そうだな。よし、みんなで団長を運ぶぞ。あまり揺らさないようになっ!」
 「俺は医者を呼んでくる。」
 「じゃあ、城周りの警備を他の奴らとしてくる。」

 団員はそれぞれの役目を考えて動き出した。セリムが倒れたのは確かに大きい。だが、騎士団が全体が動けなくなったわけではないのだ。
 皆が、一気にセリムの救出とコメット奇襲の後始末に追われた始めた。