先ほどの場所まで戻ると、ミツキとコメットの男はまだ剣を交わしていた。けれだ、疲労から2人共肩で息をしていた。

 コメットの男は、セリムとエルハムの方を見ると、舌打ちをした。そして持っていた短剣で窓を乱暴に割って
、外へと飛び出したのだ。

 「くそっ……待て!」
 「ミツキ!追うな。今は夜中だ。それに、少数しかいないこの状態では、また奇襲にあった時にエルハム様をお守り出来ない。」
 「ですが!」
 「ミツキ、お前はエルハム様の専属護衛だろ。まずは姫様を守れ。」
 「………わかりました。」


 セリムの言葉にしぶしぶ頷いたミツキは、廊下に落ちていた鞘を拾い、剣をしまった。
 セリムは小さく息を吐いた後、すぐにミツキに指示を言い渡した。


 「今から、他の騎士団と合流して、現状の把握、そして城の警備を徹底する。そのため…………ん………….?」
 「セリム、どうしたの?」
 

 セリムが何かを見つけたようで、窓の外を凝視した。エルハムもつられるように割れた窓に1歩近づいた瞬間。


 「エルハム様っ!!」
 「………え?」
 「…………っっ!!」


 それは一瞬の出来事だった。
 何かに気づいたセリムは、すぐにエルハムの前に体を出して、何かから守るように腕を伸ばしていた。
 
 そして、エルハムが体を起こした。

 すると、セリムの苦痛に歪む表情と脇腹に刺さる弓矢が見えた。


 「あぁっっ!………セリムっっ!!!」


 エルハムは悲鳴を上げながら彼に駆け寄ったのだった。