「彼が現れた場所もチャロアイト国のトンネルというのも気になります。それに異世界から来たなんて、聞いた事もありません。チャロアイトが育てた兵士で、姫様に懐き、チャンスを伺っているのではないですか?」
 「今のチャロアイトの王とは友好的な関係であるのはセリムも知っているだろう。以前会ったときも、ミツキという男は知らないと言っていたぞ。」
 「それはそうですが、!」
 「それに、だ。セイの奇襲事件やセリムの言葉を聞いてから、チャロアイトのトンネル付近に騎士団を置くようになっただろう。そこにミツキは1度も訪れた事などないはずだ。それに、私証を持たない彼がチャロアイトに行けるはずもないのだぞ。」


 アオレン王が行っている事は全て正論だった。
 ミツキがこの国に突然現れエルハムに助けられてから、私証を彼に渡すのを拒んでいるのはセリムだった。アオレン王は信頼できるとして渡すつもりだったようだが、セリムの強い説得で、渡してはいないのだ。
 それにトンネル付近の警護をしてからも、ミツキが城を抜け出しチャロアイト国に行くことはほとんどなかった。それは、城で共に生活しているセリムもわかっている。ミツキが勝手に城を出ることなどほとんどないという事を。

 けれど、セリムはどうしても彼を信じられなかった。
 自分の居場所を取ったミツキを信じるなど出来るはずがなかった。


 「セリムよ。ミツキは私から見てもシトロン国やエルハム、騎士団のために頑張ってくれていると思うぞ。………そろそろ認めてやってはどうだ?」
 「…………アオレン王様、お時間ありがとうございました。失礼致します。」
 「…………セリム、あまり無理するな。」
 「はい。」


 アオレン王の優しく微笑んだ顔と言葉が、セリムの心を痛めた。
 
 けれど、心の中は悔しさでいっぱいになっていた。それをどうにか表情に出さないよう両手を強く握りしめながら、セリムは王の部屋を後にした。


 「ミツキ………絶対に俺はお前を認めない。」


 セリムの綺麗なオレンジ色の瞳は、強く燃える炎のように揺らめいていた。