涙のち、銃声



「・・・1個どころじゃないよ。
あの子はウチにもよく遊びに来てたから。」


「アズサだけでしたか?
アズサの家で働いていた従業員は?」


「そうさね・・・。
よく辞書を片手に来てたね。」


「辞書?」


「国語辞典を持ってきて、
“これどうやって見るんだ”って。

“辞書の引き方も知らねぇのか!!”
ってアタシが教えてやったんだよ。」


「その中に“タク坊”って呼ばれていた男は・・?」


「・・・・タク坊・・?
・・あ!いたねぇ。

若いお兄ちゃんで、アズサちゃんもそうやって呼んでたよ。」


「・・・・!!!」


「ちょっとそんな見つめないでよ・・今思い出すから・・・。

確か・・・“タクヤ”だったと思う。

『なんで“タク坊”なの?』ってその時アズサちゃんに教えてもらったから。」


「愛してるよお婆ちゃん。
他に何か覚えてる?」


「うんにゃ。アズサちゃんが埼玉行っちまってからは、

桐谷さん家とはめっきり付き合い無くなっちゃったから。」