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川辺課長の“事情聴取”を終えた後、
真田さんと2人で屋上に来ていた。


柵にもたれてこの街の風景を眺めながら、
今後の捜査について話し合う。


「今も一生懸命捜索してくれてる凛子ちゃんには申し訳ないけど、

車は見つからないかもしれないですね。」


「もっと早く辿り着けてたらな・・。

長さんに口聞いてもらったのは市内の板金屋だけだから、

市外の・・いや県外まで持ち出されてたら追いようがない。」


「今頃スクラップになって、中国あたりに売り飛ばされてるかもしれませんね。」





こんな形で“平成史に残る凶悪事件”に辿り着くとは思わなかった。


桐谷ダイチと、彼の会社に勤めていた従業員数十名が起こした、

当時のムコウジマ市長 大石テツヤさん、
息子シンヤさん襲撃事件。


当時は、“大石市長が掲げていたムコウジマ再開発計画に反対する地元住民の凶行”

として報道されていたのを学生だった俺もぼんやりと覚えている。