タク坊が用意してくれた筋書き。
“堀部アズサには犯行不可能、
実行犯が別にいる”
そう警察に思わせて、
永久に真相へは辿らせない。
“ピリリリ ピリリリ”
「・・・・・!!!!」
タク坊から合図の着信が鳴ったと同時に、
右足を思いっきり踏み込んだ。
エンジン音が夜の闇を切り裂く中、
瞬きと共に風景が一気に進む。
「・・・・・・!!」
前方に人影が見えたと同時に、
信号が青から黄色、
そして赤へと変わった。
「・・・・・!!!」
「え・・・・・。」
周りがスローモーションと化した。
止まらない車に、
村山セイコが驚きの声と表情を見せる。
撥ねる直前、確かに目が合った。
0.01秒の世界だったかもしれないけど、
彼女は私と目が合った瞬間、
全てを悟ってくれた気がした。
バックミラーで確認した彼女の転がる体。
暗闇に照らされたシルエットがピクピクと動きながら、
必死に仰向けになろうとしているのを見て、すぐに視線を前に戻す。
「・・・そうやって・・ずっと・・
天国のお母ちゃんに謝れ・・・。」
アクセルを規定速度に戻しながら、
防犯カメラや人気が無い、
タク坊との落ち合い場所まで車を走らせた。