家に帰ると、また母の爆弾発言が待っていた。

「は!?明日が入学とか聞いてない!」
「あらそう?言ったと思うけど……」
呑気に返していいレベルじゃない。
「……はぁ…」

浮いたらどうしよう。
カウンセラーは優しいはず。
私の居場所はあるのだろうか。
くだらないクラスメイトはいないだろうか。

怯えている私に、母は容赦なく声をかける。
「ほら、お昼冷めちゃう」
「ああ、うん」
皿を見て私は目を見開いた。
これは駅前で行列だった外はカリッと、中はフワトロの……
「クリームフランスパン……!?」
「ああ、そうよ」
「駅ですごい行列なんでしょ!?」
「いや、もうあのパン屋は栄えてないよ。ガラガラだし」
「……そっか」
確かに引きこもっていると外の様子が分からない。
1万円札が1000円札にグレードダウンした感じがする。
「夏目、クリームフランスパンの時食いつきよかったね。見てて面白くて……くくく…あっはっは」
母は腹を抱えて笑いだした。
確かに異常なテンションだった。
顔が鉄板のように熱く火照っている。
「……」
黙ってクリームフランスパンを頬張ると、私は驚愕した。

「……え?」
テレビの食レポよりも全然不味い。
外はカリッとしていないし、中もフワトロどころかベチャッとしている。
私は味のしないクリームを指で拭い、黙々とクリームフランスパンを胃に詰めた。