嫌だと抵抗する事5回。
バックローバーで釣られる事2回。
大乱闘になる一歩手間9回。
無理に連れ出されそうになる事4回。
油断した隙に連れ出された事1回……

私は今、車に乗っている。
窓から見える景色は、私を一層驚かせた。

あのお団子屋さん、まさか潰れたの?
お隣さん、引っ越したんだ。
この大きい建物は何?
何だか派手な若者が居る。
こんな所に木は生えていたっけ?
いつものおばちゃんが居ない。

?が頭に交差して頭痛がした。
痛みに顔を顰めていると、老人ホームのような建物が見えた。

「ほら夏目、これが【四つ葉の家】よ」

「……うわぁ……」

新しい感じはしないが、ボロではない建物だった。
薄いピンクのタイルで覆われた壁の近くには、小さな畑があり、学生らしき人が畑をじっと見つめている。
プレハブでは、優しそうなカウンセラーが生徒と相談しているのが見えた。

ーこれは、嘘の笑顔じゃないー

長年の勘で分かった。
「ね、素敵でしょ?夏目」
「……うん」

口からは珍しく母に同意する言葉が零れた。
「……私、ここになら……」