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「あら、いらっしゃい。入って」



山中さんの家に着くと、壮介君のお母さんらしき人が出迎えてくれた。


大きな門を構え、庭のすみにも手入れが行き届いた、和風の立派なお家だ。



どうやら、七回忌はもう終わっているらしかった。ただ、夏休み中と言うこともあり数人の山中家の親族の方々が残っているようだ。



誰も言葉を発さないが、隼人が受け入れられていないことはひしひしと感じる。



大きな部屋に通されると、そこには壮介君らしき人の遺影があった。



「壮介……」



――ん!?

その顔を見た瞬間、ある記憶が脳裏に浮かんだ。



『愛珠ちゃーん! こっちだよー!』



外ではない。病院の中だ。廊下の向こうで、一人の少年が手招きする。




ドッと記憶が溢れてくる。

思い出した。
“壮ちゃん”




友達だった。




「今年、ようやく壮介の荷物を整理してたの。そしたら、家族みんなへの手紙やらプレゼントやらが出てきてね」



お母さんがかごを取り出す。



「その中に、あなたへって書いてあるものが出てきてね」



「はい」



隼人に渡されたのは、小さなカードのようなものだった。



押し花が貼ってあり、裏側に“隼人へ”と幼い字で書いてある。



「これは……?」



「私達にも分からないのよ」



その時。急にある光景を思い出した。



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『それなあにー?』



病室で、ベッドの上で押し花を紙に貼っている壮ちゃん。

私が聞くと、壮ちゃんが答える。



『ペチュニアだよ』



『ペチュニア? どうしてペチュニアを押し花にしてるの?』



『ペチュニアの花言葉、知ってる?』



『ううん、知らない。何?』



『それはね――』




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