『まだ分かんねえのかよ。僕は死にたいんだよ! 生きてても何も楽しくなかったよ! 毎日死にたい死にたいって思う気持ち、隼人に分かんの!? 俺のこと何も知らないくせに分かったような口聞くなよ!! 何が“生きてれば良いことある”だよ!? 苦しいことしか無かった!! 生きてることが一番苦しい人だっているんだよ! 全部自分の価値観を押し付けんな! ………もう全部、お前のせいだよ!!!』



辺りが、静まり返った。



『もう、好きに死なせてよ…………』




スローモーションのように壮介の体が前に外に傾いていく。



俺は、動くことが出来なかった。



『壮介っ!!!』



壮介のお母さんとお父さんの悲鳴が耳をつんざく。



((……と………やとっ! …………隼人!))




─────



「っ、はぁ、はぁ、はぁ、………」



誰かに名前を呼ばれて目を開けると、愛珠の心配そうな顔があった。

愛珠が俺の体を抱き上げ、タオルで額を拭いてくれている。



「ごめん……」



愛珠の手を掴み、体を愛珠に預ける。



「ちょっと、このままで居させて……」



愛珠の手が俺の後頭部に回るのが分かる。

どうして、愛珠の腕の中はどうしようもなく落ち着くのだろう。


口が、勝手に話し出す。



「……あの後、壮介が飛び降りた後……どこから話が伝わったのか分からないけど、マンションの住民全体にこの話が伝わった。……噂って火がつくもんでね……『あの子が殺したんだって』って歩く度にコソコソ言われて……。しまいには、壮介の親族の小さな子がさ、『あっ、ひとごろし!』ってさ。『何言ってるの!! 謝りなさい!!』なんてその子の親御さんは言ってたけど……」