隼人の苦しそうな声が闇の中に吸い込まれてから少しの間、私達は動かなかった。
私は、隼人の体重を受け止めることしか出来なかった。
「……行こっか」
静かな声が私の手を引いた。
◇◇◇
「同じ部屋にしちゃってごめんな。1人で居れる自信が無かったから……」
申し訳なさそうに隼人が謝る。
私達は、ホテルに来ていた。
「ほんとに何もしないから、今夜だけは一緒に居て欲しい。頼む」
他の人なら、他の時なら、断っていたかも知れない。
ただ、今夜だけは1人にしておけなかった。
いつも通りに振る舞ってはいるけど、こんなに消えてしまいそうな隼人は、見たことが無かった。
“いいよ”
それから私達はお風呂に入り、布団に入った。
和室の部屋で、布団は二つ、くっつけて敷かれていた。
「電気消すよ?」
隼人がスイッチを押すと部屋が真っ暗になる。
――ギュッ
そして、右手が別の体温を感じる。
「手、このまま繋いでても良い……?」
いいよ、の合図に私はそっと手を握り返した。
いつも余裕のある隼人がこれほどまでに取り乱すとは思わなくて、正直驚いた。
どうしてここに連れて来たのが私なのか分からなかった。分からないけれど、いつもそばに居てくれる隼人を全力で守らないと、と勝手に思った。
私の手を握る隼人がとても脆くて弱々しくて心配なのと、私を頼ってくれることに嬉しさを感じる相反した感情が私を支配した。