それでも頑張ってみようと決めたとき、隼人の姿が見えた。


帰り道。
静かに歩いていく隼人の隣を歩く。


「ねえ」



「ん? 何?」



「……何があったの?」



「何が?」



「あの日、お姉さんが封筒を持って来た日から隼人ちょっとおかしいよ?」



「……」



隼人は黙りこんで立ち止まった。



「隼人?」



「……愛珠には関係無いこと」



ここで続けていいのかも分からなかった。
多分、間違っているのだろう。



「でも、やっぱり心配だよ……」



「本当に大丈夫だから」



「ほんとに? 大丈夫には見えないんだけど」



「……」



「ねえ、はや……」



自分でもしつこいとは思った。
それでも何を言われても良かった。


今までも自分が傷付いて全てが上手く回って行くならそれでいいと思ってた。


それよりも怖かったのは隼人を傷付けてしまうことだった。



「うるせえなっ。お前に関係ないって言ってるだろ……」



突然の大きな声に体が跳ねる。



「っ……」



あ、嫌な予感。



“ごめん”



その一言が、出てこなかった。
思わず喉を押さえる私を見て、隼人は驚く。



「えっあっ、悪い……ごめん」



何とか声を出したかった。


こんなちょっとのことで出なくなってしまう自分が情けない。


弱い自分が、大嫌いだ。


隼人は何も悪くないのに、きっとそう思わせてしまった。



「……」



静かに歩き出す隼人の背中に、ただ着いていくことしか出来なかった。