「名前は?」
日陰に連れてこられ、隣に座らせられる。
「……」
「あ、俺は須貝隼人(すがいはやと)な。三年。お前は、高瀬、あい……?」
何も言わない私の鞄の名札を見て、困っている。
私はその鞄からノートとペンを取り出し、
“あしゅです”
と書いた。
「へえー、あしゅ、か。珍しい名前だね」
確かに自分でもそう思う。愛珠と書いてあしゅと読む。
「二年?」
うちの学校は学年カラーがあって、三年は緑、二年は赤、一年は青になっている。
それは鞄や上履き、ジャージなどに施されているので、一目で学年が分かるのだ。
「今日は何で学校来たの?」
「っ……」
口を開いても、言葉は出てこない。
「大丈夫だよ。落ち着いて」
先輩が、優しく声を掛けてくれる。
来るつもりは無かったんですけどね、と書き笑って見せた。
「そっかー。あ、良いこと思い付いた。今日何もないんでしょ?」
私が頷くのをまたずに続ける先輩。
「遊び行こ?」
……はい?
あまりに予想外な言葉に目を見開く。
それと同時にお金をあまり持ってきていないことに気付く。
「あ、お金は大丈夫だよ。奢るから」
ええっ! 何なの、初めて会った人に“奢る”とかさらっと言えちゃうもん?
この人、お人好し過ぎて何か詐欺とかに引っ掛かってそう……。
てか、エスパーですか!? 私が今、お金のこと考えたの、分かったの!?
「ほら、行こ?」
立ちあがり、私に手を差しのべる先輩。
……その笑顔はずるいです。
イケメン耐性無い人には破壊力が有りすぎるんですよ!
私は先輩の手を取った。