昼休みになり、私は急いで校門に向かう。
なんか悪いことをしているみたいで気が引ける……ていうか、悪いことなんだけど。
「お、来た来た」
隼人はというといつもと全く変わらないマイペースでこちらに手を振っている。
何と言うか……あなたには全く罪の意識は無いんですね?
まあ、知ってたけど。
もう逆に凄いよ。
「早く行こーぜ」
「うん」
私達は学校を脱け出した。
運良く家には誰も居なかった。
素早く入り込んで、出来るだけ必要な物のみを持ち出すようにする。
誰も居ない家には、鉛のような空気が腰を下ろしていた。
暗くて、湿気の多い空気。
そう感じるのは、先入観だろうか。
「もうこれで大丈夫か?」
「うん」
そして、靴を履こうとした時に思い出す。
「あっ、ちょっと待って」
「どうした?」
小走りで部屋に戻り、机の引き出しを開ける。
忘れ物を手にしてまた玄関へ戻る。
「ん? ああ、あの時のやつか」
そう、あの日テーマパークでお互いに買ったネックレス。
いつの間にか、私はこれを宝物にしていた。
そして今度こそ家を出る。
「じゃ、俺んちにこれ行置きに行こうか」
「うん」
両手に荷物を抱え、後ろを振り返る。
それは何だか新鮮な景色だった。
鬼のいない鬼ヶ島。
そんな言葉が似合う。
鬼達の活気さえも無い、ただ不吉な空気感だけを感じる。
でもそれはもう私を縛ることはない。
それだけで、この大きな負の島もちっぽけな牢屋に思えた。