その場はとてつもなく空気が張り詰めていた。
それを感じられるくらいには私は冷静だったけど、心臓の鼓動だけは速かった。
そんな不思議な感覚の中で、母親が自分に詰め寄ってくるのを目が捉える。
「おい!」
「晴美!!」
祖父母が悲鳴に近い声で母親の名を呼ぶ。
変にクリアな意識が、逃げることを選択した。
――ガチャン!
玄関の扉を開けて、外へ出るときに段差につまづいて足を挫く。
痛みに思わず立ち止まると同時に玄関の前に立っていた人の腕の中に転がり込む形になった。
「愛珠!?」
聞き慣れたその声。
「隼人……? どうして……」
「電話! 繋がってたんだよ。ってか、大丈夫か!?」
私が彼に返事をするよりも先に、彼が家の中から出てきた母親の手に光るものに声をあげる。
「ちょっ!! 何持っ……!」
「お前なんか! お前さえ居なけりゃ孝彦は……!」
そこで流石の彼女も隼人の存在に動きを止める。
「……誰だよ!?」
その一瞬の時間で隼人は私を立たせ、彼女と距離を取った。
その時には逃げることを考えて居たのだろう。
「愛珠の友人です。失礼します!」
そう言い放って隼人は私の手を引いて走り出す。
0.1秒を争うように走る。
挫いた足の痛みはアドレナリンにかき消されていた。
後ろを振り替える時間さえ無くて確認出来なかったが、家の敷地から出てしばらくしても姿は見えないので追ってきていないと分かった。
隼人が後ろを確認している間も私はそのまま走り続けて彼との距離を離していく。

