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普通にしろ、普通に。何も気付かれないように。



「ちょっと先輩ー! 駄目ですよ、野菜もちゃんと食べてください!」



「えー? 食ったよ」



「嘘付かないでください! 私は先輩が唐揚げしか食べてないの見逃してませんからね」



「ちっ」



「うわー、怖ーい」



自分勝手なこの気持ちを悟られないように。



目の前で隼人と麻友子が仲良さそうに話している。



麻友子はついこの前まで私の横に座って居たのに、最近は隼人の横が定位置になっている。



二人の距離が段々近くなっているのが分かる。




「ほら、ブロッコリー食べてください」



麻友子が隼人の皿へブロッコリーを運ぶ。

仕方なく、という風に隼人がそれを食べるのを麻友子が横でじっと見ている。


ああ、男子が上目遣いにドキッとするのって、今みたいな時なんだろうな。
隼人も麻友子みたいな美少女に惹かれるのかな。




「……上手い」



「やった! だから言ったでしょう?」



麻友子は「これも食べてください」なんて言いながらどんどんと食べ物を隼人の皿に乗せていく。


二人の肩が触れあうほど近い距離で話している。




まただ。胸が苦しい。



やっぱり、私は隼人と“二人きりになりたい”という勝手なことを思っている。