「家族一同、芽衣の今後をとても心配していたんだ。それこそ家族総出で芽衣の結婚相手を探そうかと思っていたくらいにね。だけどこうしてやっと紹介してくれた相手が、俊也君で本当に安心したよ」

お父さんの話を聞き、ズキッと胸が痛む。

半年前から私が婚活を始めたのには、もちろん理由があった。心配して私に会いに来てくれたお父さんから、そろそろいい相手はいないのか?と聞かれたからだ。

そして、もし相手がいないのなら見合いでもしてみないか? とも持ち掛けられた。

お父さんが薦める人だもの、きっとどこかの会社の御曹司に決まっている。

それだけは絶対に嫌だった私は、付き合っている人がいると嘘をついた。おまけに結婚を真剣に考えている人だとも。

すぐに会わせなさいと言うお父さんに、どうにか理由をつけて先延ばしし、必死に婚活をしてきた。

その理由はたったひとつ。
久我と同じような家に嫁ぎたくなかったから。もう久我の家とは関係のない、普通の家庭でありふれた幸せな毎日を送りたかったからだ。

昔の苦い出来事を思い出して、ますます胸が痛む。