旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~

「そうか? 父さんは立派なことだと思うぞ? 昴のように後継者と周知されることなく、俊也君は自分の実力で昇進して力を発揮しているのだから」

「そうですね。この際、芽衣さんと結婚されたら昴ではなく、俊也君に継いでもらったらどうですか?」

「アハハ! それはいい考えかもしれないな」

お母さんの話を聞いて笑うお父さんに、お兄ちゃんは「冗談じゃない!」と声を荒らげた。

今のような仲睦ましい家族のやり取りに、私は昔から入れずにいた。いつもだったら疎外感を感じながら作り笑いを浮かべていたけれど、今日はそれどころではない。

いったいどういうことなの? 家柄の件も、門脇部長が身分を偽っているということも。

混乱する私に気づいたのか、盛り上がる三人に聞こえないように彼はそっと耳打ちした。

「あとで説明するから、今は話を合わせて」

「……っ!?」

すぐに横を見るものの、門脇部長は三人を笑顔で眺めていた。

ますますワケがわからなくなる中、お父さんは表情を引き締めて門脇部長を見つめた。