旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~

「昴、往生際が悪いわよ。……芽衣さんが選んだ相手だもの、なにも問題ないでしょう? それに俊也君はあなたのお友達じゃない」

そう言いながらカップをテーブルに並べるお母さんに、お兄ちゃんは口を結んだ。

全員分を並べ終えるとお父さんの隣に腰掛け、真っ直ぐに門脇部長を見つめた。

「俊也君、芽衣さんのことを幸せにしていただけるのでしょう?」

お母さんの問いかけに横を見ると、門脇部長はいつになく真剣な面持ちで力強く答えた。

「もちろんです。……生涯、大切にいたします」

あまりに門脇部長が迷いなく言うものだから、本心ではないかと勘違いしてしまいそう。

本当は違う。……私たちはただ、お互いの条件を満たすために結婚するだけの契約の関係なのに。

これから関係を築いていこうって言われたけれど、それも彼の本心かどうか定かではないもの。

それなのになぜ私は彼の言葉に、ドキドキさせられているのだろうか。