旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~

「おい、なにふたりだけの世界に浸っているんだ? 芽衣、久しぶりに会ったんだ。そんな奴を見ないで俺に可愛い顔を見せてくれ」

相変わらずなシスコン発言に我に返り、慌てて視線を前に向けた。

「別にふたりだけの世界に浸っていたわけでは……」

なにやってるのよ、私。お父さんとお兄ちゃんがいる前で。……キッチンにはお母さんもいるっていうのに。

居たたまれなくなり、無駄に髪に触れているとお兄ちゃんは片眉を上げた。

「芽衣、本当に俊也でいいのか? お前に見合う男なら、俺がどんな手段を使ってでも見つけ出してやるぞ?」

「おい、昴。それはいったいどういう意味だ?」

「そのままの意味だ。芽衣と結婚できるのは、俺が認めた男と……と昔から決めていたからな」

得意げに言うお兄ちゃんに門脇部長はムッとし、お父さんは苦笑いしている。

そして一触即発な空気の中、お母さんが人数分の紅茶と焼き菓子をトレーに乗せてキッチンから戻ってきた。