旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~

お父さん、お兄ちゃんとなにやら仕事の話をし始めた門脇部長。三人の話しを聞きながら必死に胸の高鳴りを抑えていると、急に彼が囁いた。

「大丈夫、俺がいるから」

「――え」

どういう意味?

すぐに彼を見ると、なにもかもわかっていると言うように小さく頷いた。

もしかして門脇部長、私の家庭の事情を知っている……?

でもそう、よね。お兄ちゃんと中学の頃から仲が良いってことは、きっとお兄ちゃんから聞いているはず。

それでも真意を探るように見つめれば、彼はやっぱり私の気持ちを見透かしたように微笑む。

門脇部長は私の家の事情をすべて知って、結婚しようと言ってくれたのかな。そして私を気遣い、『俺がいるから』と言ってくれたの?

そう思うと、胸がぎゅうぎゅうに締めつけられていく。

目の前にお父さんとお兄ちゃんがいることも忘れ、門脇部長から視線を逸らせずにいると、不機嫌な声が聞こえてきた。