旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~

「ありがとうございます。本日はお忙しい中、お時間を割いてくださり、ありがとうございました」

門脇部長は緊張しているなんて言っていたけれど、本当に? と言いたくなるほど通常運転。お父さんと笑顔で挨拶を交わしている。

お兄ちゃんとだけではなく、両親とも顔見知りだったようだ。でもそれもそうか。門脇部長、何度も家に訪ねてきたことがあるようだし。

なんて冷静に分析をしながらやり取りを見守っていると、ふたりの視線が門脇部長から私に向けられ、一気に緊張がはしった。

「芽衣も久しぶりだな」

「……お久しぶりですね、芽衣さん」

朗らかな表情のお父さんとは違い、お母さんが私を見る目は冷たい。

「ご無沙汰してしまい、すみませんでした」

そして私とお母さんは、親子なのにお互い敬語で話をしている。……出会った時からずっと。

「今、お茶の準備をしますね」

キッチンへ向かうお母さんの後を、慌てて追いかけた。

「あっ……手伝います」

私の声にお母さんは足を止め、変わらぬ冷たい目を私に向けた。