旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~

「言っておくけど、俺だって緊張するからな? 仕事で営業先に行くんじゃないんだ。結婚の挨拶に行くんだから」

「門脇部長……」

すると彼は私の鼻を摘んだ。

「だから芽衣ちゃんも、俺の呼びかけにも気づかないくらい、緊張するのはもう終わり。……芽衣ちゃんも知ってるだろ? 俺の営業スキル。取引先の懐に入り込むのは得意なんだ。芽衣ちゃんのご両親にも好かれるよう頑張るよ」

自信たっぷりにそんなことを言う門脇部長に、思わず笑ってしまった。

「私の両親は、営業先じゃないですよ?」

突っ込みをいれながらも、心は温かい気持ちで満たされていく。

門脇部長には気づかれていたんだ。私が緊張していたことに。だからあんな言動を取ったんだね。

本社に配属されて初めて取引先に挨拶へ向かう際も、冗談を言って笑わせてくれて、私の緊張を解いてくれたよね。

いつの間にか私と一緒になって笑っていた彼は、助手席のドアを開けてくれた。