旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~

呼吸を乱し、額に汗を光らせながら真っ直ぐ私の元へ駆け寄ると、勢いそのままに抱きしめられた。

「芽衣……」

苦しいほど抱きしめられて名前を呼ばれ、頭の中がパニック状態になる。

どうして私、俊也さんに抱きしめられているの? これは夢……?

でも私を抱きしめる腕の力も、ぬくもりも、彼の匂いも全部本物。……夢じゃないんだよね。

混乱する私に彼は苦しげに言った。

「お願いだ、芽衣。……俺から離れないでくれ。そばにいてほしい」

そう言うと彼はゆっくりと離れ、瞬きできるにいる私を見つめた。

「ずっと俺、姫乃を忘れられずにいた。でもそれは、姫乃を忘れたらだめだという思いがあったんだ。そんなの間違いだと気づけずに」

「俊也さん……」

見つめ返すと、俊也さんは目を潤ませた。

「姫乃ならきっと、隣で俺の幸せを見届けていると思う。……今、俺の心の中にいるのは姫乃じゃない、芽衣だから。俺が愛しているのは芽衣だ」

「――う、そ」

にわかには信じがたい話に目を見開いた。

だって俊也さんは姫乃さん以外、愛せないはず。それなのに……。