旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~

「どうしよう、仕事が終わらない……」

今日は外に出ている同僚が多く、終業時間を一時間も過ぎればオフィスには私ひとりだけとなった。

こうなったのも全部お兄ちゃんのせいだ。……お見合い写真なんて渡してくるから。

なんてお兄ちゃんに責任転換するなんてひどいよね。仕事が終わらないのは全部自分のせい。

バッグに入れっぱなしのお見合い写真が気になって、仕事が手につかなかったから。

そのまま机に突っ伏してボードに目をやると、俊也さんも朝から外回りで直帰と書かれていた。

だけど今日は顔を合わせずに済んでよかった。

ため息ひとつ零し、仕事に取りかかった。でもすぐに手は止まり、今度は自分の左手薬指にはめられている指輪を見つめてしまう。

周囲には結婚生活が順調だと思われている。離婚を発表するまでは、この指輪も外せそうにない。

幸せの証であるはずのものが、私を苦しめる。この指輪をしている間はまだ、法律上は俊也さんの奥さんなのだから。