周囲の目も気になり、コンビニの前で立ち止まり電話に出た。

「もしもし」

『遅いんだよ、出るのが。俺だって暇じゃないんだ』

「だったら掛けてくるなよ」

話をするのは久しぶりなのに、いつもと変わらないやり取りになんだかおかしくなる。
こういう時でも昴は変わらないでいてくれる。それがありがたい。

『いいのか? そんなこと言って。芽衣に関する重要な話なのに』

「えっ」

得気げに言う昴に、緊張がはしる。

「なにかあったのか?」

『知りたいか?』

焦らす昴に苛立ちを覚える。

「知りたいに決まってるだろ?」

『離婚するのに?』

「しないから。……もう芽衣を手離すつもりはない」

すかさず突っ込んできた昴に力強く言うと、彼は声を上げて笑い出した。

『アハハ、そうか。それを聞いて安心したよ。……やっとお前の中は芽衣でいっぱいになったんだな』

「……あぁ」

素直に頷くと、昴は深く息を吐いた。

『父さんから聞いたよ。芽衣とやり直したいんだろ? だけど門前払いされているそうじゃないか』

愉快そうに昴は続ける。

『父さんは話だけでも聞こうという気になっているが、母さんが頑固でな。……昔から芽衣のことを誰よりも大切に想っているから』