旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~

彼は私の家の事情を知り、どう思うだろうか。聞いていないぞ!?と怒る? それとも引く?
いや、話すタイミングを与えてくれなかった門脇部長が悪い。

何度か今日までに伝えようと試みたけれど、ことごとくかわされたし。

責められても困る。……なんて思いながら、門脇部長は他の男性とは違う、家のことを抜きにして、私自身を見て受け入れてくれるかも……なんて期待している自分もいる。

門脇部長は私たち部下、ひとりひとりをしっかり見てくれているから。会社の姿がプライベートの姿でもあってほしいと自然と願ってしまっている。

こんな願い、身勝手なものだとわかっていながら。

茫然とロータリーに入っては去っていく車を眺めていると、急に視界が真っ暗になった。

「きゃっ!?」

びっくりして咄嗟に立ち上がると、私の背後には、にこやかな笑顔の門脇部長が立っていた。

どうやら彼が背後から私の目を覆ったようだ。その証拠に驚く私を見て、まるでイタズラが成功した少年のように屈託ない笑顔を向けてきた。

「おはよう、芽衣ちゃん」

「……おはようございます。ひどいじゃないですか、驚かせるなんて」

まだ心臓がバクバクいっている。