「私……どうしようもないほど、俊也さんのことを好きになってしまったんです。だからこれ以上俊也さんと一緒にいることはできません」

彼はそっと私から離婚届を受け取り、苦しげに言った。

「愛してやれなくて、すまない」

彼の悲痛な思いが胸に突き刺さる。

私のことを好きなら、愛してくれなくてもいい。そばにいてくれれば充分だと思っていたのに、全然だめだった。

好きと愛は、まったく違うから。

泣きそうになるものの、必死にこらえた。だってここで泣いたら、俊也さんをますます苦しめるだけだから。

「離婚してくださいと言っても、すぐには無理ですよね。両親も交えて後で話し合いましょう。それとマンションの荷物は、のちほど引き取りに来ます。……会社では今まで通り、上司と部下として接してください」

「……わかった」