言いにくそうにするお兄ちゃんに、すかさず詰め寄った。

「お願いお兄ちゃん、教えて。俊也さんと姫乃さんのことを」

俊也さんは姫乃さんのことを愛している。だけど姫乃さんはどうなんだろう。今はどこでなにをしているの? ふたりの間になにがあったの?

気になりお兄ちゃんの答えを待つ。

難しい顔をして私に話すか悩んでいたお兄ちゃんだけど、再び大きく息を吐いた。

「聞いたら芽衣は、後悔するかもしれないぞ?」

「しないよ、後悔なんて。……俊也さんのことなら、なんでも知りたいから」

すぐに答えた私にお兄ちゃんの迷いは吹っ切れたのか、紅茶を飲んで私を見据えた。

「姫乃は俊也の婚約者だった」

「……婚約者?」

あれ、でも“だった”ってどういう意味? なぜ婚約解消したのだろうか。

頭に疑問が浮かぶ中、お兄ちゃんは衝撃の真実を口にした。

「あぁ。……親同士が決めた婚約だったが、周囲が羨むほど愛し合っていたよ。……だけど姫乃は十一年前、病気で亡くなったんだ」

それは俊也さんのあまりにも辛く、悲しい過去だった。