「連絡をもらった時はびっくりしたよ。急に来るなんて」

お兄ちゃんをリビングに案内し、コーヒーを淹れながらチクリと嫌味を言う。

仕事を終えて家に帰っている途中で電話がかかってきて、『今から家に行く』なんて言うんだもの。

ひとりだから簡単に済ませようと思っていたのに、お兄ちゃんが来ると聞き、もしかしたら夕食を食べていくかもしれないと思い、急いでスーパーに駆けこんだ。
私も帰ってきたのは、ついさっきだ。

「いやー、今日は仕事が終わらず行けないかと思ったんだが、予定していた会議が早く終わってな。それに俊也から出張に出ている間、芽衣のことを頼むと言われていたから」

「え、俊也さんが?」

コーヒーを注いだカップふたつ持ってリビング行き、お兄ちゃんに渡した。

「ありがとう」

受け取ると、お兄ちゃんは美味しそうにコーヒーを飲む。そんな彼の隣に私も腰掛けた。

「相当あいつは芽衣にベタ惚れだな」

「……っ!? なに言ってっ……!」

よかった、コーヒーを飲んでいなくて。思わず吹き出すところだったよ。

カップをテーブルに置きお兄ちゃんを見ると、ニヤニヤしていた。