「結婚する前に、その……私の家族と会っていただけませんか……?」

恐る恐る問うと、門脇部長は目をパチクリさせた。

「そんなの当たり前だろ? 結婚するなら、芽衣ちゃんのご家族に挨拶に行くさ。……家族と会ってってことは、俺と結婚してくれるってこと?」

「えっと、はい。……キャッ!?」

手を離すと門脇部長は素早く私の腰に腕を回して、自分の方へ引き寄せた。

思わず彼の肩に手を置くと、すぐ目と鼻の先に門脇部長の端正な顔があって目を剥く。

微動だにできない私に、門脇部長は甘い声で囁いた。

「よろしくね、芽衣ちゃん」

「よ、よろしくお願い……」

言い終える前に唇に触れた温かな感触。

視界いっぱいに彼の整った顔があって、瞬きすることもできなくなる。

キスだって自覚したのは、門脇部長の唇が離れた後だった。

えっと……今、キスしたよね?

じわじわと実感すると、恥ずかしくて身体中が熱くなる。そんな私に彼はイジワルな顔で言った。

「これで契約成立だ。もう逃さないからな」

「……っ」

突然のキスに頭の中は大パニック状態。そのせいで私は、肝心なことを彼に伝えないまま結婚することを約束してしまった。