それでもたった一言だけど、その言葉がものすごく嬉しいものだよね。

どうやら俊也さんは、家事全般が苦手らしい。ひとり暮らしを機にできるようになろうと努力はしたようだけど、早々に自分にはできないと悟ったらしく、真顔で『人には、向き不向きがあるという現実を受け入れることも大切なんだ』と言われた時、思わず笑ってしまった。

結婚するまでは週に三回、家政婦をお願いして掃除や洗濯、料理の作り置きをお願いしていたらしい。

だから実際にふたりでの生活をスタートさせて、料理や掃除をする私を見ては、これでもかというほど褒めちぎられた。

その時の俊也さんを思い出すと、また笑いそうになる。まるで子供のように目をキラキラ輝かせて言うんだもん。

一ヵ月前より今の方が、より俊也さんを知ることができた。これからもふたりで過ごす時間が増えれば増えるほど、もっと彼のことを知ることができるはず。

この先、私は俊也さんのことが好きになるのかな? それとも、もう好きになってる?

気持ちが曖昧なままで固まらないのは、やっぱりどうしても結婚する前に彼が言った言葉が引っかかっているからだと思う。