カナはお屋敷に入っていきました。もちろん誰もいません。カナはユリの部屋がある二階に上がりました。
ユリの部屋の前でカナは立ち止まりました。 「やっぱりノックしないといけないかなあ…‥。」
カナは考えました。 その時、勝手にドアが開き、中の様子が見えました。
「アー、ユリ…‥。」 カナは思わず声をあげました。しかしユリにはカナの声は聞こえていません。
「そうだ。これは夢なんだ。」
カナはユリの話した通りの展開に動揺しました。
「本当に夢見てんだ、私。」
カナはもう信じるしかありませんでした。
カナの目の前にはユリがいました。ユリはベッドの横に立っていました。
ユリはベッドに横たわっている年老いた女性に言葉をかけていました。 「ねえーユリ…‥。」
カナは声をかけました。しかしユリは何のリアクションもみせませんでした。
「ひょっとしてユリには見えていないんだ。」
ユリにはカナが見えていませんでした。
ユリは泣いていました。
「お婆ちゃん、死なないで。お婆ちゃんが死んだら私この家で話せる人いなくなっちゃう。」 カナは思い出していました。確か1年ほど前にユリのお婆ちゃんが死んでしまったことを。 その時のユリが大変悲しんでいたことも。
カナはいつも憎たらしく思えたユリがこの時はかわいそうに感じました。
「ユリはこんなに悲しんでいたんだ。」
カナは後悔しました。いつもうらやましく思えたユリにも、こんなに悲しんでいる姿をカナは見たからです。
するとユリの周りに雪吹雪が突然起こりました。
ユリとお婆ちゃんの姿が雪吹雪の中に消えていきました。
「ユリ…‥。」