「そのオーナーさんの隣にいるのは、紛れもなく私の姉です。麗蘭姉さんです」
麗奈は麗蘭の両手を取った。
「お姉ちゃん、私…ずっと会いたかった」
麗奈は麗蘭をぎゅっと抱きしめた。
「ああ…姐御が羨ましい…」
麗奈に抱きしめられる姐御と一瞬でいいから代わりたいとぼやく大知の隣に、いつの間にか健が立っていた。
「うおおおっ!びっくりした!」
驚く大知をよそに、健は平然として抱き合う姉妹を見ていた。
「お姉ちゃん…?」
返事がないことを不思議に思ったのだろう。麗奈は麗蘭から身を離し、自分と同じ顔をした目の前の人間をじっと見つめた。
「麗蘭は、話せなくなってしまったんだよ。手の自由も利かない」
拓真の切ない声があたりに響く。
「えっ…お姉ちゃん…本当、なの…?」
麗蘭はこくりと頷いた。
「そんな…!そんな…」
麗奈はぎゅっと唇を噛んだ。
「そんな顔しないで、麗奈」
拓真の声にハッとして顔を上げると、麗蘭は笑っていた。
「拓真さん…?」
「麗蘭が話せなくなってから、麗蘭が何を話したいのか分かるようになってきた。麗蘭の気持ちを、僕が代弁するよ」
拓真は麗奈に言った。
「せっかく会えたんだもの、ゆっくり話しましょう。筆談ならできるわよ」
「お姉ちゃん…!」
麗奈は麗蘭に腕を絡めてゆっくりとカウンター席へ座った。
そしてボールペンとメモ帳を出して何やら書き始めた。

『これから始まる私たちのストーリー』


麗奈の書いた文字を見て、麗蘭は麗奈と笑いあった。