「健、大知、おつかれ。上がっていいぞ」
「はい、あざっす!」
大知が勢いよくお辞儀をした。
「お疲れっす、若」
健も大知に続いてお辞儀をした。
「蘭ちゃん、お疲れ様」
「ありがとう、たっくん」
蘭子はにこりと笑った。


(あ、そういえば…)

拓真は、ふと麗蘭のことを思い出した。朝は忙しくて全く麗蘭のことを構ってやれずにいた。外はもうすでに真っ暗だ。そういえば、麗蘭は昼はちゃんと食べたのだろうか、と拓真は心配になり自分の部屋へと上がった。
「麗蘭〜?」
部屋のドアを開けるも、そこには誰もいなかった。半分だけ空いていた窓からひんやりとした夜風が入り込んでくる。
「意外と冷えるな」
拓真は窓側へ行き、窓を閉めた。

部屋には誰もいなかった。
「戻ってないのか?どっかへ行ったのかな」
おかしいな、と呟きながら拓真は自分の部屋を出た。
「麗蘭?麗蘭、どこにいる?」
拓真は麗蘭を走り回って探したが、どの部屋にもいない。
「ん?」
健の部屋から、楽しそうな声が響いた。
「ここにいるのか?」
麗蘭の声が、聞こえた気がする。
そう思い、拓真は健の部屋のドアを開けた。
「あっ、若。どうしたんすか」
健が目を丸くした。
「ああ、いや…」
麗蘭の声がしたと思い健の部屋へ入るも、そこにいたのは麗蘭ではなく蘭子だった。

(麗蘭じゃない……声までそっくりって
紛らわしいな…)

ここにもいないということは、どこか外にでも出ているのだろうか。
拓真はそう思った。
「若。ぼーっとしてどうしたんすか?」
大知がそう言ったが、拓真はただ、ああ、と言うだけで反論などしなかった。
「どうしたんすか、若。いつもなら、ぼーっとは余計だ!って俺のこと叩くじゃないっすか」
大知が首を傾げた。
「叩いて欲しいのか」
「い、いや、そういうわけじゃないっす!けど…」
大知は眉を下げて言った。
「麗蘭を見なかったか」
「え?あね…麗蘭さん?」
「ああ、どこにもいないんだ」
「えっ、まじすか?」
健も拓真に駆け寄った。
「朝、確か忙しい時に来て…何か話したそうにはしてましたけど」
大知が言った。
「ああ、忙しいからつい、突き放しちゃったって言うか…言いすぎたなって思って。それに、麗蘭が何か言いたそうにしていたのはわかってたんだ。でも、忙しかったからつい…」
「探します。麗蘭さんになんかあったら困るし」
「大知…ありがとう」
「俺も探します」
健はクローゼットにあったジャケットを羽織った。
拓真と健、大知は麗蘭を探しに外へ出た。拓真は麗蘭のことが余程心配と見える。

「麗蘭…どこへ行った?麗蘭……」

拓真は、健と大知を連れて麗蘭を探し回った。