「麗蘭ちゃん、隠し事をしていてごめん」
佐久間は頭を下げた。
「頭を上げてください…そんな、佐久間さんは何も悪くありません」
「いや、こうやって麗蘭ちゃんに黙っていたことは、申し訳ないと思っている」
「佐久間さんは悪くないです。それに」
「それに?」
「佐久間さんのその格好は、確かに煌びやかですけど」
「…だよね」
佐久間は溜息をついた。

「でも、佐久間さんのその格好は、個性なんだと思います」
「個性?」
「はい。だって、みんな同じ人ばかりじゃつまらないじゃありませんか」
「いや、それはまあ、そうだけど」
佐久間は頷いた。
「佐久間さんには、その格好が似合ってるんだと思います」
「…ありがとう」
佐久間は、麗蘭がそう言ってくれたことに嬉しさを感じていた。
「デザイン系?みたいな仕事をなさってるって…」
「ああ、うん。その通りだよ」
「だから、そういう…個性的というか」
「うん」
佐久間は、麗蘭の言葉を聞いていると癒されると思った。しかし、個性的とはなんなんだよ、と肩を落とした。
「あ、っ…そ、そのえっと、ち、違うんです……」
何が違うんだよ、と思ったが麗蘭を困らせたくない佐久間はその言葉を飲み込んだ。
「いいよ、その通りだしな。普通はこんな格好しないし」
麗蘭の顔がみるみる曇っていく。
「違います…そんなんじゃなくて」
「じゃあなんなんだよ」
麗蘭は佐久間の言葉にびくっ、と肩を揺らした。

「わたし…」
麗蘭は、深呼吸して佐久間に言った。
「あなたは、わたしの命の恩人です。救世主なんです」
「そんな大袈裟な」
「大袈裟なんかじゃありません!佐久間さんがわたしを助けてくださらなかったら、どうなっていたか…」
麗蘭の体は、少し震えていた。
「…麗蘭ちゃん」
「はい…」
麗蘭の目の前には佐久間の手。
しかし、麗蘭はまだ握手をするのが怖いらしく佐久間の手を握ることが出来なかった。佐久間は残念そうな顔をしていたが、出会ってまだ日も経っていない自分に簡単に心を開くような娘ではないと悟った。
そう思いながらも佐久間は、麗蘭への想いを一途にぶつけようと決心したのだった。