(どうして、みんなわたしに隠していたの?こんな大切なこと)

「みゆ姉も桃さんも春彦さんも、佐久間さんも…どうして隠していたんですか?」
麗蘭は、自分だけが蚊帳の外で孤独を感じていた。疎外感といえば良いのだろうか、と麗蘭は思った。

「麗蘭ちゃん…ごめんね」
美優が麗蘭の手を握った。
春彦も桃も、ごめんと謝った。
「ごめん、麗蘭ちゃん。これは僕からお願いしたことなんだ。桃さんたちを責めないでくれ」
責めるなら僕を責めてくれ、と佐久間は麗蘭に言った。
「どうしてですか」
麗蘭は唇を噛んで佐久間を見つめた。
「僕が助けたってことを知ったら、きっと気を使うんじゃないかと思って」
「そんなこと…気にしなくていいのに」
麗蘭は呟いた。
「それに」
佐久間は続けて言った。
「君を助けたのが、こんな僕じゃ……嫌だろう?」
「どうしてそう思うんですか?」
麗蘭は首を傾げた。
「いや…だってさ、ほら。例えば、黒髪でしっかりした格好のイケメンだったら良いかもしれないけど、僕はこんなだからさあ…」
佐久間は、自分の服装を見た。
赤く染めた短髪、ピアス、じゃらじゃらとした銀のアクセサリー、そしてカジュアルな服装。
「明らかに、チャラ男だろ?遊んでるとしか思えないだろ。そんな男に助けられただなんて、誰が信じるかよ」
佐久間は向かいに立っている麗蘭を見た。
「かっこ悪いだろ?」
佐久間がそう言うと、麗蘭は予想外の言葉を発した。
「かっこいいです」
「…え?」
佐久間は驚いて、素っ頓狂な声を出した。
「かっこいいって。よかったわね、佐久間さん」
桃がにやにやしていた。

(えっ?どういうことだよ…?)

佐久間の頭は混乱していた。
「佐久間さんは、かっこいいです」
麗蘭がそんなことをさらっと言うから、佐久間は麗蘭への想いを更に強くした。

(それって、もしかしてもしかする?
もしかして、脈、あり?)

佐久間は少しばかりの期待を胸に麗蘭を見た。

「わたしのこと、助けてくださったんですもの。確かに、佐久間さんを初めて見た時はすごく怖くて」
麗蘭は佐久間を見て言った。
「さ、最初はその、わ、…」
「いいよ。遠慮なく言って」
「わるいひとかなって」

(悪い人って…そんなに僕は、強面か?
いや、強面じゃないぞ、僕は…)

「でも…佐久間さんが桃さんと話している時すごく楽しそうで、佐久間さんの目はとても優しくて…いい人なんじゃないかなあって」
「まだよくわからないけど、って言いたいんでしょ?」
「みゆ姉、どうしてわかったの?」
「まあね」
美優はえへへと笑った。