(怖いけど…なんでだろう。
佐久間さんのことが気になる。
どんな人なのか知りたいって思う…)

麗蘭は、ゆっくりと階段を降りて赤ん坊のように両手両足で歩を進め、カウンターの中へと入った。桃と春彦と美優は驚いたが、知らないふりをしてくれた。
「どうしました?」
佐久間が不思議そうに言ったが、春彦は何でもないと言ってその場をやりすごした。
「春彦さん」
佐久間が春彦を見て言った。
「どうしたら麗蘭ちゃんと仲良くなれるんでしょうか」
「んー、麗蘭ちゃんが自分から来るのを待つしかないんじゃないか」
「そうですよね…あんなに怖がらせちゃったし」
佐久間は溜息をついた。
「でも、佐久間さんはわるいひとじゃないってわかってくれるわよ、きっと」
「桃さん…」
「そうそう!なんてったって、倒れていた麗蘭ちゃんを助けたのは佐久間さんなんだからーあっ!!」
「みーちゃん…」
春彦が肩を落とした。
「ごめん!つい…」
「墓穴を掘ったわね」
「ううー、やっちゃった〜」
項垂れる美優の横からにゅーっと麗蘭が顔を出した。
「えっ!?麗蘭ちゃん!?」
佐久間は勢いよく立ち上がった。
麗蘭は目をぱちぱちと瞬かせていた。
「みゆ姉、それってどういうこと?」
麗蘭は立ち上がって美優を見た。
「う、うん、あのね…」
「僕から話します」
佐久間は麗蘭を見て言った。
「麗蘭ちゃん。僕は、倒れていた君を見つけて…ここへ運んだんだ」
「えっ…わたしを?佐久間さんが?」
「うん…ほっておけなかったし」
「佐久間さん…」

(佐久間さんは、わたしの命の恩人…)

知らなかった。佐久間さんが、私を助けてくれていたなんて。それにしても、なんでわたしにそんな大切なことを隠していたの?隠す必要なんてないのに。麗蘭はそう思った。